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2016.01.07 木

ピッチャーの投球に潜む傷害リスク – 今こそ選手の将来を真剣に考えるべき時

トレーニング

アスリートパフォーマンス情報サイト『CNC mag』の中からスポーツパフォーマンス向上に役立つ記事をご紹介します。

CNCmag

ピッチャーの連投は危険と言われますが、科学的に理由を解説している記事は日本では少ないですね。今回は、ピッチャーの障害リスクをピッチャーの投球動作から各フェーズの筋肉や骨格の状態・モーションを解説。その中から科学的調査を引用しながら連投に潜む障害リスクを詳しく解説します。

投球モーションの各フェーズに存在する潜在的傷害リスクと変位

日本の中学や高校での野球のコーチや監督に、是非とも読んでいただきたい記事です。

日本の甲子園という高校野球児の憧れの舞台では、毎年、素晴らしいドラマを見ることができます。三年間すべてを捨てて野球に打ち込んできた汗と涙の集大成でもあります。

しかし、連戦連投を行なうピッチャーの負担が日本国内だけでなく、海外でも疑問視されていることを前回の記事に掲載しました。

参考記事:セイバーメトリクスで見る野球 – 古い慣習や常識を捨てて見直そう

決して誤解してほしくありませんが、上記の記事は甲子園を否定するものではありません。「将来ある選手のためにも、データに基づいて甲子園を毎年、良い方向へ改善して欲しい。」という希望です。

なぜ、ピッチャーの投球数が多いことがいけないのか?

単純に2つほど大きな理由を挙げてみます。

1. 投げるというキネマティックメカニズムの問題

つまりピッチングというスポーツ動作自体が肩や肘に大きな負担を掛ける動きであることを理解しないといけません。では、どのような負担があるのでしょうか?投球モーションを簡単に3つのフェーズでまとめました。

そして、肩や肘の動きやストレスをA, B, C,…と英字で列記していきます。

フェーズ1:コッキング

この手前にワインドアップからウェイトシフトというタイミングがありますが、コッキングは地面に足が接地して、投げる腕が後ろにあるタイミング(アーリーコッキング)から、身体が捻られて腕がしなり始めるタイミング(レイトコッキング)までの動作を指します。

アーリーコッキング時には、

A.上体の回旋がスタートするので、その回旋に遅れて肩関節の前方がストレッチされます(水平外転)。つまり、肩関節前方にストレスが掛かります。

当たり前ですが、肩関節後部は収縮されるので、ローテーターカフにもストレスが掛かります。

レイトコッキング時には、

B. 腕がしなり始めるわけですが、身体の回旋に遅れて肩関節が外旋し、肘は外反します。非常に大きなストレスが肩と肘(特に内側側副靭帯)に同時に掛かります。

フェーズ2:アクセレレーション

コッキングで溜められたパワーを使って、一気に腕を振り下ろして加速していくフェーズです。

C. 外旋位であった肩関節はそこから一気に内旋動作をして、外反していた肘は一気に伸長していきます。ここで肩や肘関節が大きく伸ばされます。この上腕骨の内旋スピードは秒速6000〜7000°と言われていて、最も肩を痛めやすいフェーズであるとも言われております。

フェーズ3:デセレレーション

アクセレレーションで一気に加速した腕がボールをリリースした直後の急激なブレーキ(減速)のフェーズを、デセレレーション(減速期)と呼びます。

D. ここでは主に肩の水平内転が主に起こり、ローテーターカフ後部が肩が抜けないように作用してくれます。つまり、これがストレスとなるのです。そして、ボールをリリースして大きく伸ばされた腕を戻すために上腕二頭筋も急激な収縮を起こします。

上記のピッチングにおける一連の動作をスローモーションで見れる動画があります。

腕が凄くしなったり(外旋)、ボールをリリースして内旋したりするのがよく見えますので、御覧ください。

2. ピッチング後の身体の変位について知ること

具体的な投球数は出ていませんでしたが、海外の論文によれば、「ピッチング後、肩関節内旋は平均9.5°と肘関節伸展は3.2°減少し、その状態が24時間持続する。」(SOURCE: Changes in shoulder and elbow passive range of motion after pitching in professional baseball players. via PubMed)

つまり、その状態で連投した場合、「可動域が減少する状態で投げる=代償動作を引き起こし、傷害リスクを高める」という事に繋がるのです。

選手の将来性を真剣に考えるなら投球数制限を徹底すべき

まとめとなりますが、ピッチング動作自体に上記A.〜D. で記載した肩や肘への負担(ストレス)が多いこと。そして、投げ終わった後の肩と肘関節に変位が起こることを踏まえるならば、将来ある選手のためにも投球数制限を徹底するべきであると言えるでしょう。

次回は、ケガ予防・対策として何を考え、行なうべきかを掲載したいと思います。

>>Write By ROKIYA WASEDA

rikiya-150x150専門はストレングス&コンディショニング。プロ格闘技の選手及びキッズアスリートの指導が中心。それと並行して、アメリカの最新スポーツビジネスにおけるサービスを幅広く手掛けるネットワークが強み。現在、ELEMENT ATHLETIX、STROOPSなどを国内へ導入しライセンス普及を推進。また、スポーツに欠かせない身体パフォーマンス向上をデータで実証するコーチング事業を展開する株式会社CORE N’ CODEを設立し、日米の企業から様々なオファーを受けている。STROOPS Master Trainer, NSCA-CSCS

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