FITNESS BUSINESS

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【シニアマーケティング】フィットネス業界における介護予防最前線

2017.03.25 土 トレンドサービス

【シニアマーケティング】
年々、日本の高齢化は進み介護予防ビジネスが大きな広がりをみせている。これに伴い、高齢者特化型ジム、デイサービス施設、地域支援事業の受託などを行うフィットネスクラブ運営事業者も増えている。本稿では、高齢者層にフォーカスしたプレイヤーが提供するプログラムと施設を紹介する。

フィットネス業界における介護予防最前線


他社に先駆けて介護予防ビジネスに参入した株式会社ザオバ。2013年68号から2014年70号まで本誌にて連載を寄稿していた村瀬秀也氏に注目の施設やプログラムを訊いた。

【今回お話しを伺った方】
株式会社ザオバ 取締役 村瀬秀也氏

段階に応じた介護予防の概念


厚生労働省が定める介護予防とは「要介護状態の発生をできるだけ防ぐこと、そして要介護状態にあってもその悪化をできる限り防ぐこと、さらには低減を目指すこと」である。高齢者の健康寿命を延ばし、生活の質を高めていくためには、生活習慣病予防と介護予防を地域で総合的に展開していくことが大切である。

予防の概念としては一次予防から三次予防の3段階に整理して捉えることができる。

一次予防は、主に活動的な状態にある高齢者を対象に生活機能の維持・向上に向けた取り組みを行うもので、高齢者の精神・身体・社会における活動性を維持・向上させることが重要である。二次予防は、要支援・要介護状態に陥るリスクが高い高齢者を早期に発見し、対応することにより状態を改善し、要支援状態となることを遅らせる取り組み。そして、三次予防は要支援・要介護状態にある高齢者を対象に、要介護状態の改善や重度化を予防するものだ。

こうした予防の各段階に応じてサービスやプログラムが提供されている。昨今では、多くのフィットネス事業者が介護予防市場へ参入している。提供するサービスは事業者によって異なるが、ルネサンスやセントラルスポ―ツ、ウェルネスフロンティアを始めとするいくつかのフィットネスクラブ運営企業は運動特化型のデイサービス事業を展開している。

s_IMG_2354ルネサンス元氣ジムでのトレーニング中の様子

これらの施設は既存のデイサービス事業者との差別化を図るため、これまでフィットネス事業で培ってきた運動プログラムの提供による身体機能の向上を独自の価値として提供する。このほかにも地域支援事業として市区町村が管理する施設で介護予防事業を受託するケースも増加している。

セントラルスポーツが施設管理を行う介護予防総合センター「ラクっちゃ」は港区最大の複合施設内に施設を構える。同センターでは運動教室だけでなく、「英会話教室」「タロット占い」など運動とは直接的に関係のないサービスを呼び水として施設利用者の拡大を図っている。

一方、公共施設の空きスペースを活用し、独自のサーキットトレーニングを展開するのがシンコースポーツである。同社は公共施設の会議スペースや空きスペースを利用した「ラウンドフィットネス」と呼ばれるオリジナルのサーキットプログラムを提供。油圧抵抗式のマシンを利用したトレーニングため、怪我のリスクは低く、高い運動効果が得られるプログラムとして好評を得ている。

対象顧客を絞った価値提供が重要


一方で、対象顧客のニーズを明確にし、課題解決に特化した施設を展開する事業者も出てきている。

「『脳梗塞リハビリセンター』は脳梗塞の後遺症を患った方に対し、麻痺をはじめとした運動機能障害、歩行機能障害のリハビリ専門で行う施設です。保険外サービスのため、利用料はすべて個人負担となりますが、利用者は年々増加しており、現在では首都圏を中心に7店舗を展開しています。高齢者層に限定した施設ではないものの、利用者の約半数は60歳以上の高齢者層です。

東急スポーツオアシスが運営する『らくティブ赤羽』は、フィットネスクラブに通うほどアクティブではないが、シニア住宅や介護住宅に入居するほどではない「はざまシニア」を対象顧客に設定し、お茶会の時間を設けるなど高齢者同士の交流を入り口にして事業を展開しています。昨年11月にオープンしたばかりの施設のため、現段階で事業の成否を判断するのは難しいですが、これまで埋もれていた潜在顧客を掘り起こすという意味では非常に注目しています」(村瀬氏)

赤羽②らくティブ赤羽でのお茶会の様子

フィットネス事業者にとって高齢化に伴う介護予防市場の拡大は、追い風となることは間違いないだろう。一方で、近年従来の総合型のフィットネスクラブが勢いを失い、マイクロジムやブティックスタジオなどの小規模業態のクラブが急成長していることからもわかるように、対象顧客のニーズを理解し、最適な解決方法を提示できるプレイヤーが今後の市場をリードしていく存在となるだろう。



【企画・構成】
株式会社クラブビジネスジャパン
オンライン事業部フィットネスビジネス編集部:庄子 悟