FITNESS BUSINESS

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メディカルとジムの融合で新たなビジネスモデルを確立

2015.04.25 土 TR-キャリアビジョン

【Profile】
佐藤 健司さん
1962年北海道上川郡愛別町生まれ。1982年3月、旭川工業高等専門学校を中退して東京へ。1986年日本鍼灸理療専門学校卒業、翌年日本柔道整復専門学校卒業。日本橋名倉整形外科、深谷整形外科を経て1993年北里研究所病院就職。その後、2003年に札幌へ帰郷。05年12月スマート・スポーツ有限会社設立、翌年7月スマート・スポーツ接骨院開業。2014年11月スマート・スポーツGYM開業。

選手をメディカルの分野から支えたい!

北海道、上川郡愛別町出身。小学校4年生の頃から剣道を始めた。父の影響もあって旭川高専へ進んだが、心のなかにはずっとモヤモヤしたものがあった。「やっぱり、スポーツが好きだ。将来はスポーツに関わる仕事がしたい!」

プレーヤーとしての道を目指すより、裏方として、メディカルの分野から選手の活躍を支えたい。そう思い、1982年、20歳のときに東京へ。専門学校に通い、鍼灸マッサージと柔道整復師の資格を取得した。その後、日本橋にある整形外科へ就職。さらに、3年後には町田市にある整形外科へ。院長の特長でサッカー選手を診る機会に恵まれたが、日常的なケガやリハビリが中心。もっと手術適応の患者さんと接して、知識や経験を広げ、深めたいという考えがあった。

そこで、1993年3月、北里研究所病院へ転職。約9年間に渡って、スポーツ選手のケガや生活習慣病の患者のリハビリを担当した。そして、2002年に退職。20年間の東京生活から北海道へ帰郷して、接骨院を開業する準備を始めた。場所は、新札幌に決定。ターミナル駅であり、近隣に学校が多いからだ。「運動療法ができること。それと、地域密着型であるということ。この2点をコンセプトにしました」

地域密着型をめざしたのは、『患者さんと長い付き合いを続けたい』という思いがあったから。「一人の選手やチームと、ずっと関わりながら長い目でサポートしたい。そう考えると、地域で頑張る高校生や中学生を対象にした施設というイメージが、次第に明確になってきたんです」こうして2006年7月、「スマート・スポーツ接骨院」が誕生した。

自分で考え、行動する―自立した選手へ

現在、「スマート・スポーツ接骨院」があるのは、新札幌駅から徒歩1分という好立地。そこに併設しているのが2014年11月にオープンした「スマート・スポーツGYM」だ。店舗の外壁には2つの看板が並び、広々としたワンフロアに治療とトレーニングのスペース、ファンクショナルトレーニングに活用する人工芝エリアを完備している。「開設当初は、ここから200mほど離れたところにあったんです。でも、縁あって現在地へ移転拡大。それに伴いジムも併設しました」

00325_1432733449ファンクショナルトレーニングに活用できる人工芝エリアを完備

接骨院の収益は、院内での保険診療と保険外診療、そして訪問診療の三本立て。それに、ジムが加わった。ジムを開設するにあたり、スタッフも増員。現在は、4名のスタッフが在籍しているが、すべてのスタッフが社員であり、柔道整復師や鍼灸師などの有資格者だ。

「スタッフ全員が、治療とトレーニングに当たれるのが、うちのメリット。だから、有資格者じゃなきゃ、うちで雇う意味がないんです。現在もスタッフ募集をしているけれど、資格を持っていることが最低条件。それ以外は、元気で明るく、パッションがあること。それだけで充分です」

佐藤さん、通称bossはそう笑うが、なかなかこの条件を満たす人は多くない。特にパッション。目の前のクライアントに、どれだけの愛情を持って、その人の役に立ちたいと思えるか。ただ、目先の問題を解決するだけなら簡単だ。単なる対症療法を施しておしまいという一過性の治療であれば、難しいことはない。だが、それは「スマスポ」の果たすべき役割ではない。

「施設名にある『スマート』という言葉がすべて。この言葉をテーマにしようと思いついたのは、今から20年くらい前のことです。当時はまだスマホなどなかった時代。スマートといえば『痩身』『スリム』というようなイメージしかなかった時代です」

本来、スマートの意味は「賢い」だ。そのとおり、選手自身が自分で考え、判断し、自立した人間になることをサポートしたい。ただ、施術者やトレーナーの言うことをはいはいと聞くだけで、ケガをしたときはすべてお任せという甘えた選手ではなく、スポーツプレイヤーとしてのレベルアップを自分の手で成し遂げる。「スマート・スポーツ」という施設名には、そんな選手の育成に貢献したいという夢と使命がこめられているのだ。

「そのためには、スタッフの教育も大切。どうしてこの治療が必要なのか、なぜこのトレーニングを行うのか、選手に考えてもらうのも、スタッフの手腕にかかっていますから」現在は月1回、定例で勉強会を開催。ここは選手ばかりじゃない、スタッフ自身が成長する場でもあるのだ。

人間としての成長に触れる醍醐味

「一番うれしいのはここを巣立って、遠くの大学などへ進学していった選手達が、休みに帰省したとき、顔を見せに来てくれること」と話すboss。現在、スマート・スポーツに通うなかでもっとも多いのが高校生のスポーツ選手であり、相当の感慨があるに違いない。「高校1年生で初めてここへ来たときなんて、ハッキリ言ってまだ子どもですよ(笑)『スポーツをするのに、どうしてトレーニングが必要なのか』など、トレーニングの基礎理論もわかっていないし、これまで教えられた経験もない」

でも、彼らも月日が経つにつれて成長していく。自分の頭で考え、行動できるようになっていく。それは、まさにスポーツ選手としての成長だけでなく、人間としての成長や熟成を追う軌跡でもある。

「大人を指導するのと違って、高校生を教えるのは大変です。難しい説明や理論も、噛み砕いて言わなくちゃ伝わらない。同じことを何度も繰り返さなければわかってもらえない。でも、『あれをやれ、これをやれ』と、口うるさく言わないようにしているんです。その代わり、『なぜ、このトレーニングが必要なのか』という、根拠をきちんと説明する。そうした積み重ねが、やがて選手にとって考える力になるんじゃないかって思うんですよ」

もちろん、ジムの会員は現役のスポーツ選手ばかりじゃない。運動履歴のまったくない30〜50代くらいの男女も多く入会している。メディカルのバックボーンがしっかりしていることと、きめ細やかな指導が受けられること。それからbossをはじめ、スポーツを愛する明るいスタッフが揃っていることも、このジムの魅力だ。

「現在、日本ではトレーナーとして独立し、活躍できる人はそれほど多くありません。これからは、若いトレーナーの方々から『将来はこんなふうになりたい』『こんなこともできるんだ』と思ってもらい、新たな一歩につながるような、成功モデルをめざしたい。そうすれば、業界全体の活性化につながると思うんです」

選手だけじゃない。指導者にもスマートでいること、すなわち、自分で考え、行動できる自立した人間になることがなによりも必要だと実感させられるひと言だ。

【Organizetion Data】
スマート・スポーツ有限会社
所在地: 〒004-0052 北海道札幌市厚別区厚別中央2条5丁目3番40号 新札幌駅前ビル
ホームページ: http://www.gym.smart-sport.jp/
設立: 2005年12月
組織: 5名
収支構造:【売上】保険診療、保険外診療、訪問事業、講習会講師   【経費】人件費、家賃、減価償却費

【記事出典】
月刊NEXT 2015/May No.98 My Dream,My Business

【企画・構成】
株式会社クラブビジネスジャパン
オンライン事業部フィットネスビジネス編集部:庄子  悟