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【NEXT 12月特集】世界に学ぶ保険のしくみとフィットネス "ドイツ"篇

2016.11.25 金 スキルアップ

リハ・スポーツ
保険で通える


ドイツでは、生活者の9割が公的保険に加入し、高額所得者の1割が民間保険に加入している。ドイツのリハ・スポーツは、この9割の生活者が加入する公的保険でプログラムの参加が補助されることが注目される点だ。

リハ・スポーツは、法定保険制度の条項の中にある、戦後の身障者に対してスポーツ参加を促す条項を、現代の身体に痛みを抱える人向けに転用するように開発された仕組みで、長期的自立的に自己責任で行う運動への参加を促そうとするもの。腰痛などでGP(家庭医)の診断を受けた際に、GPから専用の用紙に処方箋を書いて貰えば、リハ・スポーツ認定トレーナーによるレッスンに自己負担なく50回参加することができる。

リハ・スポーツを提供する施設は、その処方箋をもとに法定保険に申請をすると、患者1人あたり1回4ユーロが保険から支払われる。リハ・スポーツは15人程度のグループレッスンとして提供されることから、施設にとっては1時間60ユーロ(約8,500円)が得られることになる。

この仕組みの魅力は、患者が18ヶ月の間に50回通うことができることだ。フィットネスサービスの利用に慣れたり、仲間ができることでフィットネス行動が習慣化されたり、継続のモチベーションが生まれることになる。

また、この仕組みを地域に根づかせる段階で、周辺のGPたちに運動の価値を啓発することができ、保険でカバーされるサービスを活用することでGPに経営的なメリットも提供できることで、プログラム提供者がGPとも良好な関係が築けることになる。生活者にとっては、GPからリハ・スポーツを処方されることで、フィットネスに取り組む必要性を感じやすく、トレーニングの価値も感じて貰いやすくなるというメリットもある。

リハ・スポーツの指導者は、ドイツ身障者スポーツ協会の指導者講習会を受け、認定試験に合格すれば、理学療法士などの国家資格が必要ないため、民間フィットネス施設でも提供しやすい。ドイツでは、民間クラブでリハ・スポーツ提供のための運営コンサルティングを専門に行うリハ・ヴィタリスプラス協会があり、ここに加盟することで、施設認可のためのアドバイスや保険にほる補助金請求を代行して貰うこともできる。2014年時点で380社が加盟している。ドイツは世界でも日本に次いで高齢化が進んでいることから、介護予防の観点からもリハ・ スポーツのサービスは注目される。

理学療法
保険で通える


ドイツでは、GPの診断により、リハビリや理学療法が公的保険でも民間保険でも受けられる制度が整っている。民間保険は公的保険に比べて月々支払う保険料が高いものの、リハビリにかかる費用を1時間当たり65ユーロ補助して貰えるものもある。

一方、公的保険でのリハビリの補助額は3人の患者への指導で1時間42ユーロとなっており、保険でカバーされるリハビリプログラムを提供する病院や理学療法士にとっては経営効率が低い。そのため、民間保険会社と提携して、民間保険加入者に絞ってリハビリサービスを提供する施設も出てきている。

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上の写真は、ドイツのミュンヘンで理学療法士が経営するクラブMFT。理学療法施設とフィットネスクラブを併設し、保険会社から補助が得られるサー ビスと自己負担のサービスを連携させている。フィットネスはドイツ製の高性能マシン「milon」を利用したサークルトレーニングが行われている。

【関連記事】 小規模業態の戦略 データ化と運動メニュー標準化でニーズを掴む(2016.11.17)


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【記事出典】
月刊NEXT 2016/December No.117 

【企画・構成】
株式会社クラブビジネスジャパン
オンライン事業部フィットネスビジネス編集部:庄子  悟

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