FITNESS BUSINESS

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【NEXT 12月特集】世界から見る日本のフィットネス "アルゼンチン"篇

2015.11.25 水 スキルアップ

フィットネス業界が成熟期から、次のステージへの変革期に入っている。これまで世界のトレンドに影響されながら成長してきた日本のフィットネス業界。日本独自のフィットネス文化が息づく中、近年ではインストラクター・トレーナーがダイレクトに世界最先端の情報やプログラムをいち早く日本に紹介し始めている。今回は、日本と世界のフィットネス・トレーニング市場を良く知る関係者に世界的視点から見た日本のフィットネスの現状と今後について訊いた。

アルゼンチンから見る日本のフィットネス
妊婦でも臨月までレギュラーレッスン子どもの時から、とことん気軽にフィットネスに親しむ

とことん気軽にフィットネス


2014年10月に主人と2人でブエノスアイレス(アルゼンチン)に移住しました。現在、私は臨月を迎え、お腹の赤ちゃんと会える時を今か今かと待っているところです。外国で妊娠~出産を経験する貴重な機会に恵まれ、日本とこちらのフィットネス業界との違いも際立って感じることができています。

まず、一番大きな違いとして感じるのが、フィットネスが人々の生活に自然に位置づけられていて、気軽に参加していることです。自己責任の考え方が浸透していることもあるかもしれませんが、妊婦でもかわらずフィットネスに参加できますし、私もインストラクターとして、臨月までずっとレギュラーレッスンを週2本担当してきています。クラスではレッスンに遅れて参加する人が、笑顔で手を振りながら入ってくると思えば、毎回必ず遅れてくる方もいます。そして気分が乗らないときは遠慮なくスタジオから出て行くといった、とても自由な雰囲気です。

また、子どもたちも気軽にレッスンに参加します。私自身が担当するダンスエクササイズ系クラスでも12~15歳の少女たちが彼女たちの母親たちと多く参加していますし、個人経営のスタジオやジムでは、幼稚園や小学生くらいの子どもたちも、親の横でマイペースに参加する姿が見られます。またその子どもたちがクラスを気に入ると、同級生や近所の友だちも連れてきて、まさに“遊びのひとつ”とも言えるくらいにフィットネスが子どもの頃から浸透しています。この気軽さが、フィットネス参加の敷居を下げ、非常に高い参加率に繋がっていると感じます。

総合フィットネスクラブ、ドライジム、マイクロジム、女性専用ジム、ダンススタジオ、ヨガ・ピラティス スタジオ、武道専門道場、ファンクショナル専門ジムなど、ブエノスアイレス都市部では1ブロックにひとつは何かしらの運動関連施設があると言われるほど施設が充実しており、どこも賑わっています。日本と似ているところもあります。グループエクササイズに人気があることや、流行っているものは、日本と似ていると感じます。

ランニングを始めとしたベーシックな有酸素運動、マシーンや自重を使った筋力トレーニングは定番で、昨今のファンクショナルトレーニングの人気はここアルゼンチンでも顕 著です。フィットネスクラブにおい てはスタジオプログラムのクラス数やコンテンツも充実しています。グループエクササイズでは、日本と嗜好が非常に良く似た、音楽の特性を活かしたファン要素の強いスタジオプログラム(ダンスエクササイズ系、格闘技系、コンデイショニング系、調整系、エアロビック系)が豊富にあります。RADICAL FITNESSをはじめ、プレコリオエクササイズの配信業者も大小あり世界へ発信しています。

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敷居を下げて、多くの人に世界ナンバーワンの指導を


様々な分野において、そしてフィットネスにおいても日本の人の探究心、サービス精神、ホスピタリティー精神の豊かさ、そしてそこから派生する指導力は世界でナンバーワンだと日本を離れたことでより強く感じています。ただ、一方で伝統や格式を重んじる精神や、他人を思いやる配慮の心が強いため、大胆かつ斬新な個性あふれるアイデアを実践する事に躊躇する面もあるようにも思います。また、日本の参加者にはモチベー ションのひとつに「さらなる技術の向上」が明確にある事が大きな特徴だと思います。

アルゼンチンでは「とにかく汗をかきたい、ストレス発散したい、カロリー消費したい」といったシンプルなニーズのみ。それだけに日本においては「既存の顧客や参加者のモチベーション」にフォーカスした指導やサービスに偏ってしまいがちで、一般の方にとって敷居が高くなってしまっていないかも見直してみることも必要かと感じます。既存の参加者へのサービス提供は満足度をキープしつつも、近い将来、遠い将来において顧客となりうる若年層へのアプローチや、運動と無縁の人たち、無関心の人たち(日本は非常に多いと思います)との接触の機会、体験の機会をもっと設けられるようにできると良いのではないでしょうか。

安全面、衛生面、ルールやマナー、サービスの観点など日本人に即したものを維持しつつも、より気軽で手軽な運動体験が提供できるようになるとフィットネスが自然なものとして日々の生活に入っていくと思います。

インタビュー:伊藤まどかさん
指導歴17年。日本国内ではフリーインストラクター、ナイキアスリート、RADICAL FITNESS JAPANヘッドマスタートレーナー他、フィットネスやスポーツマーケティング、後進の教育や育成の現場等で幅広く活動。2014年家族の夢である有機・自然栽培農業の夢にチャレンジするべく移住計画をたてアルゼンチンへ移住。ブエノスアイレス都市部でレギュラーレッスンを担当する傍ら、 RADICAL FITNESS CENTRAL (本部)マスタートレーナー、 プログラムディレクターとしてダンスエクササイズプログラム 「MEGADANZ」の開発責任者としても活躍中。第一子の出産予定日2015年11月18日を目の前に、第一線で活動している。

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【記事出典】
月刊NEXT 2016/December No.105 

【企画・構成】
株式会社クラブビジネスジャパン
オンライン事業部フィットネスビジネス編集部:庄子  悟