FITNESS BUSINESS

facebook twitter googleplus

【NEXT 12月特集】世界から見る日本のフィットネス "ドイツ"篇

2015.11.25 水 スキルアップ

フィットネス業界が成熟期から、次のステージへの変革期に入っている。これまで世界のトレンドに影響されながら成長してきた日本のフィットネス業界。日本独自のフィットネス文化が息づく中、近年ではインストラクター・トレーナーがダイレクトに世界最先端の情報やプログラムをいち早く日本に紹介し始めている。今回は、日本と世界のフィットネス・トレーニング市場を良く知る関係者に世界的視点から見た日本のフィットネスの現状と今後について訊いた。

ドイツから見る日本のフィットネス
保険適用のフィットネスと"町医者"的トレーナーが浸透目的重視のフィットネス文化

目的重視のフィットネスニーズ

ドイツのフィットネス業界の特徴の一つとしてメディカル業界と近い関係にあることが挙げられます。ルッケンフィット(RückenFit)といって腰痛の予防&改善のためのプログラムが、たいていのクラブで実施されている一方で、クランケンジムナスティックとよばれる、理学療法士が常駐する施設がいたるところにあります。ドイツでは、ある程度のスキル(体育大学卒業/高度な教育課程を修学)を身につけている指導者は、保険適用されるプログラムを実施することができ、参加者はプログラム料金の20~30%の自己負担で参加することができるシステムを活用したサービスがフィットネスの浸透を支えています。

その他にも、安価でフィットネスに参加できる機会も多くあります。たとえば、フォルクスホッホシューレ(Volkshochschule=民間大学の意味。日本でいうとカルチャーセンター的な場所)というところがあり、そこでは安価で運動プログラムに参加することができます。また、街の郊外には月会費15~20ユーロのフィットネスクラブも多くあり、若者が多く通っています。公園でのグループレッスンやパーソナルトレーニングも盛んに行われています。

ドイツ人は保守的で、新しいものになかなか手を出さない傾向があるようですが、一度気に入ると(自分の身体に良いと感じると)、とことんそれを継続する印象があります。その一つの例が、EMS(ElectricalMuscleStimulation)で、近年EMSのマイクロジムが急増しています。ドイツ人は「機械を使う/論理的なもの」を好む傾向にあります。その一方で最近の若者の間でのフィットネストレンドは、日本にとても似ていて、ズンバ、レスミルズ社のプログラム、トランポリンなどをはじめ、ヨガももちろん人気です。

ドイツのフィットネス環境に身を置いて気づいたのは、日本ではフィットネス参加の動機として「どうなりたい!」という目的重視ではなく、「何をしたい!してみたい!」というプログラム重視な印象があることです。日本人は新しいもの好きで、そのため、流行り廃りが激しいのかとも感じます。本来「運動の目的」が 第一優先で、その目的を達成するための手段として、様々な手法やプログラムがあるべきだと思っていますが、日本は「手段が目的」になってしまっている印象を受けます。

日本のトレーナーは世界的に見ても緻密なプログラミングと繊細な指導力がありますので、より目的にコミットした指導を追求していくことで、トレーナーとしてより本質的な仕事ができることに繋がると感じます。もちろん、世界的視野で競争力を高めていくには語学力が必要なことも改めて痛感しています。

“町医者”が増える中、どう自分をポジショニングするか


日本でも、理学療法士をはじめ医療従事者がピラティスの資格を取得するなど、運動指導の分野にも活動の幅を広げつつあるかと思います。また、マイクロジムが増えつつある日本の状況は、病院に例えるならば、町医者が増えてきた状態。今までは総合病院(フィットネスクラブ)しかなかった環境から、腕のよい医者が独立して専門医院(マイクロジム)を作っている状況だと思います。ドイツが今その状態です。

ここでトレーナー活動をしていて感じるのは、自分が将来どのようなトレーナーになりたいかを明確にイメージすることの大切さです。生き残れるトレーナーは、一芸に秀でているスペシャリティーなトレーナー・インストラクターか、多種目指導可能なマルチトレーナー・インストラクターのどちらかです。つまり、自分は総合病院で働きたいのか。独立して働きたいのか。その中でも、専門性を発揮したいのか。マルチなスキルを身につけ、色々なニーズに応えることができるようになりたいのか。また、そのスキルをどのような人々に提供したいのか。そういったところをクリアにすることで、身につけるべきスキルや、やらなければならないことが具体的になってくると思います。

今は様々な情報が錯綜していて、周りのトレーナー・インストラクターが「この研修を受けた」「この資格を取得した」と聞くと焦り、不安ばかりが募るかと思います。ですが、自分が進むべき道を常にイメージすることで、その不安は消え、自信を持ってやるべきことに取り組むことができると思います。そうすることで、自分にしかできないオンリーワンのトレーナー・インストラクターとして成長することができると思います。

インタビュー:竹井伯夫さん
指導歴22年。エアロビクスをはじめグループエクササイズインストラクターとして活躍後、ピラティス指導者に。日本の大手フィットネスクラブのアドバイザーやプログラム開発を手掛ける。2014年子供の教育環境を考えドイツへ移住。現在、直営スタジオ「N2FITNESS Germany」と、欧州大手クラブチェーン「ホルムズプレイス」などでピラティスを中心に指導にあたる。PLC認定MATマスタートレーナー GYROTONIC® GYROKINESIS® 認定トレーナーJCCA認定アドバンストトレーナー

フィットネス総合オンラインショップ人気バイヤーが厳選した最新アイテムを多数掲載!
buyers-head

【記事出典】
月刊NEXT 2016/December No.105 

【企画・構成】
株式会社クラブビジネスジャパン
オンライン事業部フィットネスビジネス編集部:庄子  悟