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【NEXT 12月特集】世界から見る日本のフィットネス "ピラティス"篇

2015.11.25 水 スキルアップ

フィットネス業界が成熟期から、次のステージへの変革期に入っている。これまで世界のトレンドに影響されながら成長してきた日本のフィットネス業界。日本独自のフィットネス文化が息づく中、近年ではインストラクター・トレーナーがダイレクトに世界最先端の情報やプログラムをいち早く日本に紹介し始めている。今回は、日本と世界のフィットネス・トレーニング市場を良く知る関係者に世界的視点から見た日本のフィットネスの現状と今後について訊いた。

ピラティス第一世代からの学びから見る日本のフィットネス

ピラティス第二世代マスターティーチャーの認定を受け、さらにピラティスの遺産としてまとめられた指導者育成コース「ロリータレガシー」のエデュケーターとなった櫻井淳子さん。このエデュケーターは世界にまだ20名足らずの希少な存在。生存者2名となったピラティス第一世代ティーチャーからピラティスの遺産を受け取った櫻井さんがこれから日本で目指すこととは。

ピラティスの遺産


櫻井さんが自身の身体の不調に悩み、ピラティスに出会ったのが11年前。ピラティスの効果や魅力に惹かれ、創始者のジョセフ・ピラティスについて調べてみると、既に1967年10月、84歳でこの世を去ったことを知る。その時に「彼から直接教えを受けた第一世代の人に教わりたい!」と心に決めたという。それを目指して5年前から定期的に渡米しての勉強と練習をスタートさせた。それが現実となり、さらに今、自身が第二世代としての役割を担おうとしているのだ。櫻井さんは、その認定証を手にしたとき、嬉しさよりも、責任の重大さに押しつぶされそうになったと振り返る。

「今回認定を受けたのは『第二世代ピラティスマスター&ロリータ・サン・ミゲェル ピラティスマスター』というインストラクターとしての認定と、『ロリータレガシーエデュケーター』という指導者育成の認定です。ロリータ・サン・ミゲェルは、ジョセフ・ピラティスから直接指導を受けたピラティス第一世代と言われる人の中でも、ピラティス氏から直接指導者認定を受けた2人のうちの1人。ロリータは、ジョセフと、妻クララ・ピラティスから直接受け継いだ60年近くにおよぶ研究開発の集大成を遺産として残すために、ピラティスメソッドの神髄を守り、最高峰の指導者を生み出す指導者育成コースにまとめたのです。

コースは2年間で、160時間のロリータからの直接指導と、5回の試験と論文発表があります。英語が苦手な私はハンディを感じましたが、言葉での表現力がない分、動きでの表現力でカバーしようと、自宅にフルイクイップメントを買い揃え、とにかく練習を積みました。必死に取り組んだので、認定証を手にしたら、どんなに嬉しさや達成感があるだろうと想像していましたが、実際に認定証を手にすると、認定証が意味することの重大さを改めて痛感して、気持ちの整理に1週間くらいかかりました」

ロリータは現在81歳ですが、その81年分の学びと、ピラティスの遺産という貴重なバトンを後世にも残していくという果てしなく重大な役割を担ってしまったのです。大切なのは、これから。「ようやくその役割を果たすべく、具体的に動き始めたところです」

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ロリータレガシーエデュケーターの認定は、第二世代マスターティーチャーの認定を受けた人でも、チャレンジする人が少なく、実際に認定を受けるには高いハードルがあるという。それは、ロリータにとってのピラティスインストラクターとは、「ピラティスの全てのスキルを習得しており、全てのイクイップメントを合わせると1000前後にも及ぶエクササイズから、目の前のクライアントに対して最適なものを提供できるスキルがある人のこと」を指す。そのため、ロリータレガシーの指導者養成コースでは、リフォーマー、トラピーズ・テーブル、チェア、スパインコレクター、ピラティス・サークルなどの日本でも馴染みのイクイップメントはもちろん、ジョセフがオリジナルで開発したもので、現代でも現実的に可能なものは全て習得するカリキュラムとなっている。そのためエデュケーターになるには、実際にバラエティに富んだイクイップメントを所有し、教えることができることが求められる。櫻井さんは「自分がスタジオオーナーだからこそ、チャレンジできた資格」だと話す。

米国には、ピラティスイクイップメントメーカーも多数あるが、リフォーマーだけでも、各社それぞれに特徴があるため、ロリータレガシーでは、各社のリフォーマーの特徴を自身の身体で理解したうえで、クライアントに提供できるスキルも要求される。まさに、ピラティスの神髄を理解し、目の前の人にとって最適な方法をすべてのピラティスの中から選び、的確に指導できるインストラクターが育成できる環境が必要なのだ。

自分で確認することの大切さ


櫻井さんは、ピラティスティーチャーとして大切にしていることとして 「自分で確認すること」を挙げる。第一世代の指導者からの直伝を希望したのも、自分の身体でピラティスとは何かを確認したかったからに他ならない。その櫻井さんも、そこまで行きつくには多くの回り道があったという。当初は、日本で取得できるピラティス流派の養成コースで学び、次第に理解が深まってくると、米国のピラティスティーチャーの中でも、「この人はピラティスを知っている」と感じる人から教えを乞うようになったという。特定のピラティス流派のメソッドでの指導力や、動きやスキルの高さよりも、流派や持っている資格に関わらず、目の前のクライアントにとってベストなエクササイズを提供できる力を持つインストラクターを選んで学ぶようになる。

櫻井さんは日本では自身のスタジオ「ピラティスボディスタジオ」を経営する傍ら、小学校5年生の男の子のママとしてPTAの役員なども務める。日常では自分自身がセッションを受ける時間が確保できないことから、日々の自己練習の他、週2回のセッション受講時間を1ヶ月8時間× 12ヶ月と年間に換算して、毎年100時間のセッション受講を自分に課している。それを年間4〜5回に分けて、本当のピラティスが学べると思えるピラティス指導者のもとで1回の渡米につき20〜40時間程度ずつ集中的に学ぶことを続けてきている。

現在の日本のフィットネス業界は、小規模のスタジオが増えている。骨盤系やボディワーク系メソッドも増え、資格も10年前の10倍くらいの種類がある。そこで活躍し続けるには、それぞれに差別化が必要で、自身の強みをだしていくことが必須と櫻井さんは捉えている。今後、直営スタジオは、ピラティスの遺産を守る地として位置付け、関東と関西に新たにロリータレガシーのトレーニングセンターを設立して、日本でもピラティスの神髄に触れられる場に育てていきたいと話している。

インタビュー:櫻井淳子さん 
ピラティスメソッドジャパン株式会社代表取締役、国立理工系大学出身。大手メーカー研究所にて研究職、大手システム会社にてSEを経験。出産後ピラティスに出会い、その深い運動学・生理学的理論と、心への作用に感銘を受け、ピラティスインストラクターに転身。本物のピラティスを広めたいという強い願いで、数々のピラティス団体で勉強を重ね、2010年「PILATES BODY Studio」を設立。海外のマスターティーチャーの元でのトレーニングも続け、質の高いレッスンから、国内のピラティス資格保有者からも支持を受け、指導者育成やワークショップ開催なども続けている。「インストラクター・オブ・ザ・イヤー2010最優秀賞」受賞。

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【記事出典】
月刊NEXT 2016/December No.105 

【企画・構成】
株式会社クラブビジネスジャパン
オンライン事業部フィットネスビジネス編集部:庄子  悟