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【NEXT 12月特集】世界から見る日本のフィットネス "パフォーマンストレーニング"篇

2015.11.25 水 スキルアップ

フィットネス業界が成熟期から、次のステージへの変革期に入っている。これまで世界のトレンドに影響されながら成長してきた日本のフィットネス業界。日本独自のフィットネス文化が息づく中、近年ではインストラクター・トレーナーがダイレクトに世界最先端の情報やプログラムをいち早く日本に紹介し始めている。今回は、日本と世界のフィットネス・トレーニング市場を良く知る関係者に世界的視点から見た日本のフィットネスの現状と今後について訊いた。

パフォーマンストレーニングの第一世代からの学びから見る日本のトレーニング


フィットネストレーナーからキャリアをスタートし、現在コンディショニングセンターのオーナーであり、トップアスリートのトレーナーとしても活躍している桂良太郎さん。「フィットネスクラブのお客さまの中にも機能改善のトレーニングを必要とされている方がいる」と、いち早くパフォーマンストレーニングを学び始め、これまでに世界のパフォーマンストレーニング第一世代と呼ばれる運動指導者たちからも直接指導を受けてきた。その一貫した動作評価~トレーニング処方のシステムを日本にも導入すべく尽力する一人となっている。

一貫した動作評価システムを日本でも


桂さんは現在、パフォーマンストレーニング・ファンクショナルトレーニングに精通する日本人トレーナーの一人として知られるが、そうしたトレーナーの多くが米国でアスレティックトレーナーの勉強をした経緯を持つ中、希少な日本のフィットネストレーナー出身者。日本の大学を卒業し、民間フィットネスクラブに就職したのち、パーソナルトレーナーとして独立。以来、独学でパフォーマンストレーニングを学びながら現場指導に活かすとともに、米国にもたびたび足を運んでは、最先端の情報を、自身の血肉にしてきた。

「2007年に、フィットネスクラブ社員として米国のクラブ視察に行ったときに、機能改善のトレーニングが、米国で既に浸透しつつあることを感じたのが、私にとって大きなパラダイム転換でした。フィットネスクラブでパーソナルトレーナーとして働きながら、2005年には東京オープンボディビル選手権大会75㎏級で優勝し、身体づくりの指導には自信がありました。ただ、それでもお客さまのニーズに応えきれていない感覚があり、トレーニングに関する洋書を取り寄せたり、世界に情報を探し始めていました。そんな中、米国視察の最後に参加したIHRSAコンベンションの展示フロアでふと手にしたパフォームベターのパンフレットに衝撃を受けたんです。そこには、お客様の機能改善に通じるセミナー情報が数多く載っていて、商品カタログには、興味をそそられるギアが何ページにもわたり並んでいて。すごくワクワクしたことを覚えています」

以来、トレーナーとして提供する指導サービスを“身体づくり”から“動きづくり”へとシフトさせ、貪欲に学んでは仕事に活かしてきた。

その桂さんが今、最も注目し、自ら学び、日本に紹介しようと考えているのが、動作評価とパフォーマンス向上のための一貫したシステムである。これは、米国の動作評価システムのパイオニア達である、グレイ・クックやリー・バートンらによって提唱されており、世界中でその妥当性や効果が実証されているもので、動作スクリーニングのFMS(ファンクショナル・ムーブメント・スクリーニング)を入り口に、痛みがある人には関節機能評価システムのSFMA(セレクティブ・ファンクショナル・ムーブメント・アセスメント)を。

動きに痛みやリスクのない人には、各種の基本的体力要素を評価するパフォーマンステストFCS(ファンダメンタル・キャパシティ・スクリーニング)で、身体の状態を定量化し、その評価をもとにトレーニングを組み立てていく。トレーニング処方のガイドラインも用意されており、これを導入することで、一貫した動作に関する共通認識のもとに、的確なトレーニングが提供できることになる。

その必要性について、桂さんはこう話す。

「この一連の動作評価とトレーニングの考え方は、米国ではナショナルチームやトップアスリートのトレーニングとして先行して導入され、一般生活者のトレーニングにも広がってきています。スポーツの現場では、選手やチームに対して、コーチの他に、アスレティックトレーナー、フィジカルトレーナー、理学療法士など様々な身体の専門家が介入をしますが、1つの共通認識と共通言語、そしてリハビリからストレングスまでの一連のパフォーマンスアップのプロセスを、一貫したシステムでマネジメントすることで、選手を迷わせることもなくなります。また、ジュニア時代から一貫した指標で選手の動きやパフォーマンスを高めていくことで、怪我や障害を予防しながら長く活躍できる選手や強いチームをつくることができます。さらに一般生活者の方のトレーニングに同じ指標を導入することで、トレーナーがそれぞれの方に、評価に基づいた的確な指導ができるようになり、確実な成果に繋げられることでトレーナーの社会的価値も高められることに繋げられるのです」

日本にも貪欲に学ぶカルチャーを


米国で開催されるカンファレンスやセミナーでたびたび学ぶ桂さんが、もう一つ米国の市場をみていて、日本にも環境として採り入れたいと思うのが、トレーナーたちが貪欲に学ぶカルチャーだ。日本でも近年、世界最先端のトレーニング理論が学べる機会も増えてきているが、そこに学びに来る人は、情報感度の高い一握りのトレーナーであり、そこで質問する人は、さらに限られるという。桂さん自身は、そのような日本の情報に対する感度の乏しさや積極性の乏しさに対して危機感を感じており、もっと積極性に情報を取りに行くべきだと考えている。

s_%e6%a1%82image4パフォームベターセミナーの様子

「米国では、セミナー中に受講者から積極的に質問が投げかけられます。講師と受講者の間で、互いを尊重しながら積極的に学ぼうとするポジティブな雰囲気がとても心地よく感じられます。それに比べて、日本人はとても大人しいと思う。もっと問題意識や情報へのアンテナの感度を高く持ち、本質的なモノ・普遍的なモノを見失うことなく、様々な情報に敏感になるべきだと思います。お金を払ってセミナーに出ているのであれば、日頃の運動指導に沢山の疑問を感じているのであれば、クライアントにもっと最良の解決方法を提供したいと本当に思っているのであれば、もっと自らの課題を明確にして、積極的に情報を取りに行き、積極的に質問をするべきだと思っています」桂さんは、2015年12月に、自身が貪欲に学ぶきっかけをもらったパフォームベターの講師として登壇する。今後は指導者としても、日本のスポーツ医科学やトレーニング市場をサポートしていく。

日本のフィットネストレーナーも、貪欲に学ぶことで、トップトレーナーとして活躍できることを示してきている桂さん。2020年の東京五輪や、それらに関するプロジェクト、その後のアスリートサポートにも日本人トレーナーとして役割を果たしていくことを目指している。

インタビュー:桂良太郎さん 
株式会社Best Performance Laboratory代表取締役 福岡大学卒。民間フィットネスクラブに就職、チーフトレーナーとして活躍後、2010年にパーソナルトレーナーとして独立。2013年にパフォーマンスセンター「Best Performance Laboratory」をオープン。トップアスリートのトレーニングやコンディショニングサポート、大学スポーツチームのトレーナ ーとしてもパフォーマンス向上のトレーニングに広く支持を集めている。民間フィットネスクラブアドバイザー、セミナー講師としても全国で活躍中。最先端のパフォーマンストレーニング関連情報に精通する理論派トレーナーとして知られる。資格にNSCA-CSCS、JATI-ATIなど。

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【記事出典】
月刊NEXT 2016/December No.105 

【企画・構成】
株式会社クラブビジネスジャパン
オンライン事業部フィットネスビジネス編集部:庄子  悟