FITNESS BUSINESS

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【NEXT 12月特集】世界から見る日本のフィットネス "フィットネス業界動向"篇

2015.11.25 水 スキルアップ

フィットネス業界が成熟期から、次のステージへの変革期に入っている。これまで世界のトレンドに影響されながら成長してきた日本のフィットネス業界。日本独自のフィットネス文化が息づく中、近年ではインストラクター・トレーナーがダイレクトに世界最先端の情報やプログラムをいち早く日本に紹介し始めている。今回は、日本と世界のフィットネス・トレーニング市場を良く知る関係者に世界的視点から見た日本のフィットネスの現状と今後について訊いた。

“世界的経営視点から見る日本のフィットネス業界”

アメリカ、イギリス、イタリアにパートナー企業の各種フィットネスサービスから日本の業界動向に合うサービスを紹介してきているブラボーグループ。その社長、ジョン・ボードマンさんは18年にわたり日本に拠点を置きつつ、世界各国の業界関係者との情報交換を続けてきている。世界的視野から見る、日本のフィットネス業界動向について訊いた。

キーワードは「バラエティ」と 「レジティマシー」


ジョン・ボードマンさんは、東京に生まれ育ち、米国の大学に進学。フィットネス業界には、サイベックスのアジア担当マネージャーを5年務めたのを皮切りにブラボーグループを立ち上げ、その後平行してライフフィットネス日本法人の立上げと代表を3年間務めた。

これまでのキャリアで培った世界的視野とネットワークで、海外のフィットネス商品やサービスのうち日本の市場に合うものを見極め、商品の輸入や指導者の育成を通じて日本のフィットネス産業の発展に寄与してきている。現在は、米国のグループエクササイズ配信企業MOSSA、英国でViPR(バイパー)を開発・販売するFitPro社、イタリアの音楽配信企業SAIFAMなどと提携しており、それぞれの社長と月1回の頻度でスカイプ会議をしている。日本の市場参入に興味を持つ海外企業からの問い合わせも多く、海外の人に日本の市場動向を紹介する機会も多い。年平均2~3回は自身も海外に足を運び、代理店会議で各国ベンダーとの情報交換や現地クラブの視察をして世界の動向を確認している。

そのボードマンさんが、現在の日本のフィットネス市場動向として注目するのが「バラエティ(Variety)」と、「レジティマシー(Legitimacy)」。

「バラエティについては、世界的な動向で、新業態の開発がさかんに行われることにより、フィットネスの選択肢が多様化していることです。新業態の開発は世界的に見ても米国が先行していますが、米国発のサービスが日本流で浸透したカーブスやエニタイムフィットネスに加え、日本でもライザップやホットヨガスタジオなど、小規模クラブの開発がさかんに行われています。それに伴い、会費設定も月会費制だけでなく、都度利用制をとるところも増えています。さらにICTの進化とともに、テクノロジーを活用したフィットネスサービスも増えています。日本のフィットネス産業は、世界的にみると『客単価が高く、ビジネスモデルが確立した成熟産業』というイメージがありましたが、フィットネスの選択肢が多様化したことで、改めて日本市場に参入のチャンスを伺う外国企業も増えていることを感じます。

s_%e3%83%9c%e3%83%bc%e3%83%89%e3%83%9e%e3%83%b3dsc_0400Schwinn(シュイン)との提携により今年から日本でもサイクルプログラムインストラクターの養成コースを開始している

もう一つ注目すべきはレジティマシーが高まっていることです。英語の『レジット』は『ホンモノの』という意味ですが、フィットネス業界が産業としても信頼されるようになってきていて、世界では投資会社も注目するビジネスになっており、現に成功しているフィットネスビジネス、特にフランチャイズは国内外のビジネスランキング上位に入ってきています。日本でも同様に産業として社会からの信頼が高まってきています。それとともにフィットネスへのニーズも、楽しさよりも確実な成果に移行しつつあります」

トレーナー・インストラクターへの役割ニーズも多様化へ


フィットネスの多様化と信頼性が高まる中、トレーナー・インストラクターへのニーズも多様化しており、欧米では既に“フィットネス”の枠組みを超えて活躍の場が広がっている。日本でも今後注目される活躍分野として、ボードマンさんは以下を挙げる。

まず、トレーナー・インストラクターの企画力が、グループエクササイズ配信企業やマシンメーカーで必要とされるようになる。既に、日本人インストラクターでプレコリオプログラム開発に関わる人も増えているが、米国ではファンクショナルトレーニングに精通するトレーナーが、マイクロジムのレイアウトづくりのコンサルティングに関わったり、各種ウェアラブルサービスを展開するICT企業や、スポーツアパレル企業のサービス開発に関わる例が増えている。米国ではアップル、ナイキ、アディダスなどの大手有名企業でトレーナーやインストラクターがサービス開発にリーダー的ポジションで関わり始めている。その他、健康志向が高まる中、一般アパレルメーカーやフード関連企業のアドバイザーなどの仕事も増えていく。

フィットネス業界内での役割も多様化していく。パーソナルトレーナがスモールグループインストラクターとして働くことで、より大きな価値や影響力を提供できたり、フィットネス指導者の活動領域が、健康、メディカルの分野へと広がっていく。米国では、ヘルスコーチング、ライフコーチング、メディカルエクササイズスペシャリスト、行動変容スペシャリスト、関節痛スペシャリストなど、専門性を高めながら広い分野で指導者たちが活躍し始めている。日本でも同様の動向が見られ始めている。

こうした中、トレーナー・インストラクターとして活躍し続けるには「速いスピードでの変化対応力が何より必要」とボードマンさんはアドバイスする。

「特に、テクノロジーをマスターすることはこの変化に対応するうえで必須と言えます。また、今後は益々科学的根拠に基づいた効果的な企画やプログラミングが求められることから、栄養やエクササイズの強度設定などについても、より確かな知識が必要となるでしょう。ただ、それ以上に大切なこととして、変化対応への一歩を今踏み出すことです。私の好きな言葉に『学び続けよう。今いる場所から。(Always be learning. Start where you are)』というものがあります。この変化の中で自分がどうなりたいか、自身の成功を定義して、動き始めることが大切です。速いスピードで変化する環境には正解もなければ、ルールもありません。自分が動いてルールをつくる、お客さまをつくる、仕事をつくるといった意識でチャレンジを続けることが、自分の成功に確実に近づける方法だと思います」

インタビュー: ジョン・ボードマンさん
アメリカ・マサチューセッツ大学でホテル学科に通い、マンハッタンを代表する高級ホテル「ザウォルドルフアストリア」で2年間働いたのち、ニューヨーク大学でMBAを取得。日本の金融機関を経て、米国マシンメーカーの経営職を歴任。その後「自分のビジネスを立ち上げたい!」と、1996年にブラボーグループを立ち上げた。「運動と音楽で人生を変える」というコンセプトのもと、音源配信や、インストラクターの養成、フィットネスプログラムの販売等を手がけている。趣味はトライアスロン。

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【記事出典】
月刊NEXT 2016/December No.105 

【企画・構成】
株式会社クラブビジネスジャパン
オンライン事業部フィットネスビジネス編集部:庄子  悟