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【NEXT 6月特集】世界で活躍する日本人トレーナー  

2017.06.16 金 スキルアップ

#4 元NBAサンアントニオ・スパーズアシスタントアスレティックトレーナー 山口大輔さん

【サンアントニオ・スパーズ】
アメリカ合衆国テキサス州サンアントニオに本拠を置くプロバスケットボールチーム。NBAのトップチームの一つで、NBAにおける通算最高勝率を維持している。ここ20シーズン連続でプレーオフ出場。デイビッド・ロビンソン、ティム・ダンカンなどが所属していたチーム。

米国でバスケットボールといえば、アメフト、野球に次ぐ人気の高いスポーツ。NBAはそのアメリカバスケットボール界の最高峰プロリーグ。山口大輔さんが活動していたのは、そのNBAで最高勝率を持つトップチームだ。

山口さん自身、小学校からバスケットを始め、中学時代に同年代の米国バスケット選手の短期留学を自宅でホストファミリーとして受け入れたことで、一気にアメリカへの興味が高まった。言葉が通じない不安と緊張で受け入れたその夜には、同世代で同じスポーツに打ち込んでいることもあり、すっかり打ち解けた。

その体験以来、いつの間にか、米国バスケットボールのプロチームでトレーナーになることを目指すようになっていたという。その夢への大きな一歩となったのが、インディアナ州立大学を進学先に選んだことだったと山口さんは振り返る。


6月号⑮


「同大学は、ATCのカリキュラムを持つ大学の中でも歴史が長く、伝統やプロフェッショナリズムを重んじていました。トレーナーとしての知識や心構え以前に、身だしなみや態度、言葉づかいなどに凄く厳しかったんです。私はNBAに憧れて渡米して、英語で友人と話したり、飲みに行ったり、ドレッドヘアにしたりしてアメリカ文化に浸って仲間に囲まれていることが楽しかった。

トレーナーという仕事への意識はあまり高くなかったんです。でも、大学時代にプロフェッショナリズムをたたき込まれたことで、その後になって、本当の意味で仲間たちと最高の場を共有するうえで大切なことを身につけられていたことに気づきました」

また、大学院でペンシルバニア州カリフォルニア大学院を選んだことがトレーナーとしての実力とネットワークを広げた。当時、同大学は米国でもいち早くオンライン教育をスタートさせており、最先端の教授陣を集めていた。現在広くトレーナーたちから支持を集めているNASMやPHIピラティスのワークショップを、創始者から直接受けられる環境があった。

当時は決して有名な大学院ではなかったものの、NBAのトレーナーとして必要なことが最も学べそうなコースとして選んだ。教授陣や先輩トレーナーたちのネットワークで、卒業直後のサマーインターンでNFLチームで働く機会も得られ、その後、念願のNBAでの仕事を手繰り寄せた。

6月号⑯山口トレーナーのキャリアステップ


現在は、東京医科歯科大学で、アスリートの怪我予防やパフォーマンスアップのトレーニング指導を手掛けている。トレーナーとして世界のトップチームで活躍した経験から、日本人トレーナーとして大切にしたいことについて、こう話す。

「トレーナーの仕事は、時間を惜しまずに取り組めば取り組むほど、知識も経験もついていきますが、近年は米国のATCでも週あたりの勤務時間が制限されるようになり、昔できたような経験ができなくなっているのも現実です。一方で、日本人トレーナーの良さは、勤勉なことや、下積みに耐えるメンタリティを持っていることだとも感じます。


6月号⑰


トレーナーの仕事がやりたい、こういう仕事が好きという気持ちを強みに、大切だと感じることを大切にしていくことでこそ、世界で通用する存在になれると思います。日本のスポーツやトレーナーの環境は、体育会系のメンタリティが残っていて、上下関係なども重視すべき場面も多く、『ここではこうすべき』と考え過ぎてしまう嫌いがあります。

でも、これは本来サポートすべき選手が混乱するだけ。選手のトレーニングで選手自身の感覚が大切であるのと同様に、トレーナーとしても最も大切なことを感じとる力を大切にしておきたいですね」

<次ページ:#5  元NBAミネソタ・ティンバーウルブススポーツパフォーマンスディレクター 佐藤晃一さん>

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