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【NEXT 6月特集】世界で活躍する日本人トレーナー  

2017.06.16 金 スキルアップ

#3 元MLSロサンジェルス・ギャラクシーアシスタントアスレティックトレーナー(パートタイム) 黒子甫さん

【ロサンジェルス・ギャラクシー】
アメリカ合衆国カリフォルニア州ロサンジェルスに本拠を置くプロサッカーチーム。MLSのチームで最も多い、5度のリーグ優勝を誇る。デビッド・ベッカム選手、スティーブン・ジェラード選手などが所属していたチーム。

6月号⑪黒子トレーナーのキャリアステップ


米国では、1994年のFIFAワールドカップの開催国になったことを期にプロチームが登録するメジャーリーグサッカー(MLS)が発足。現在サッカー人口は世界で2番目に多いと言われている。黒子さんは、そのMLSに登録する米国プロサッカーチームで2年間アシスタントアスレティックトレーナーとして活動した。

黒子さんがトレーナーを目指すようになったのは、高校3年生で進学を考え始めたとき。自身は選手としてケガや故障に悩まされたことはなかったものの、ケガや故障でリタイアする選手を何人も見てきた。そんな中で「将来は、スポーツをやっている人が長く続けられるサポートをしたい」と思うようになる。

そこで「スポーツトレーナー」という言葉に興味を持ち、専門学校に進んだ。間もなく米国のスポーツ現場を視察に行く機会を得て、そのスケールに圧倒され、「ここで勉強したい!」と思うようになる。専門学校を卒業すると、社会人アメフトチームで実習をする傍ら、フィットネスクラブや整形外科などのアルバイトで現場経験を積みながら、留学資金を貯めていった。

留学先に選んだのは、カリフォルニア州立大学ロングビーチ校。歴史のあるアスレティックトレーニングプログラムがあったからだ。学生トレーナーとして大学内のチームで学生トレーナーとして働く一方、在学中にLAギャラクシーに日本人カイロプラクターがいることを知り、人づてで学生インターンとしてトレーナーのアシスタントができる機会を得た。


during 2014 MLS Cup at StubHub Center on December 7, 2014 in Los Angeles, California.


「まだ言葉でのコミュニケーションに自信がなかった分、とにかくひたすらに自分ができることを丁寧にやっていきました。ただ一生懸命やる中でも、自分ができることをアピールすることの大切さも感じるようになりました。なぜなら、いくら自分がやれること、やりたい気持ちを持っていても、選手に実際に提供して結果に繋げられなければ何も意味がありません。機会があるごとに、意識して自分から働きかけていくことで選手やコーチとの信頼関係もできていったと感じています」

黒子さんが、米国でのトレーナー活動を通じて学んだことに、プロスポーツのシビアな世界と、そこに携わる人々が長期視点を持っていることがあるという。プロの世界では、昨日までいた選手が急に戦線離脱してチームからいなくなることも少なくない。黒子さんは、その分、1日1日のトリートメントも、プロ意識を持って1日でも長く選手がチームでプレイできるようにと誰よりも丁寧に行った。

また、特に大学スポーツでは、大学卒業後にプロとして活躍することを前提に選手生命を考え、各分野の専門家が選手とコミュニケーションをしていく。ケガのリハビリや復帰のタイミングも、選手生命を最優先に置いてプランが組まれる。選手たちも、文武両道を志すアスリートがほとんどで、大学卒業後プロを目指しながらも、自身のレベルや引退時期を冷静に判断して、大学では学士号をとるのが普通。プロのユースチームでも、勉強する時間はしっかり確保されているという。


6月号⑭


黒子さんは、このような選手生命を考えてのコミュニケーションの大切さを学んだ今、日本でも、自分がもともとしたかった、アスリートが1日でも長くスポーツで活躍できることをサポートすることを目指す。現在はピラティススタジオに拠点を置いて、アスリートや一般生活者のパフォーマンスをサポートしている。

黒子さんは、将来活躍を目指すトレーナーに向けてこうアドバイスする。「トレーナーと一言で言っても、その環境によって、やること、やれることは様々です。トレーナーとして何をしたいのかを見つけつつも、何でもまず信念を持ってチャレンジすることが大切だと思います。


6月号⑫


アスレティックトレーナーの仕事は幅広く、日々の安全管理や応急処置、脳震盪や心臓発作など生命に関わる傷害の対応、リハビリから復帰のサポートまであり、ドクターやコーチとの連携も重要な役割です。私の場合は、より選手のコンディショニングに焦点を当てて、長く選手生活を送れる力をつけたいと日本に帰国しました。自分のやりたいことが追求できる環境を選びながら、トレーナーとしても成長し続けたいと思っています」

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