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ウェルネスの科学 第2回-

2015.04.21 火 オリジナル連載

ヘルスケア業界に突如現れた新星 “石川善樹”。本連載では、予防医学研究者・医学博士としての立場から見た、業界でのイノベーション創造に向けた考え方・ヒントを伝えていく。
【バックナンバー】

・ウェルネスの科学ー

こんにちは。予防医学研究者の石川善樹です。

わたしたち研究者は、学問を生業としているのですが、「本質的に何をする職業なのだろうか?」と考えこむことがあります。結論からいうと、おそらく学問という文字にあるとおり、「問い」から学ぶことを延々と繰り返しているのだろうなと思っています。

そういう意味で、わたしたちはあらたしい「問い」が大好きです。誰でもそうだと思いますが、どうしても一人で考えていると視野が狭くなります。そういった時に、ビジネス界やスポーツ界など、ちがった分野の人とお話させて頂くと、思わずハッとするような「問い」を投げかけられることがあります。

たとえば先日、「IT×ヘルスケアで何かやりたいんだ!」とアツく燃えてらっしゃる方にお会いしました。まだ具体的に何をしたいのかは決まっていないのだけれども、アプリを作って人々の健康に貢献したいとのことでした。

そして、「こんなのはどうだろうか?」と色々とアイデアを出し合っていたのですが、その方がふと、こんなことをおっしゃったのです。

「ITを活用した健康づくり。いま、どこまで分かっているんですか?すでに有効だとわかっている機能をアプリに盛り込みたいのですが、教えてください!」

ふいの質問に、「・・・むむむ、たしかに」とその場で思わず考え込んでしまいました。私自身、あまりITと縁がない生活をしているので、真面目に考えたことがなかったのですが、たしかに一度まとめておくのは大事だなと思ったのです。

ということで前置きが長くなりましたが、今回は「ITを活用した健康づくり」について最新かつ最善の知見をご紹介したいと思います。もちろん、とても広い分野なので、特に「インターネットを活用した行動変容」に絞って、誤解を恐れず大胆に要点をまとめていきます。

その1:インターネットを使って健康行動は変わるのか?

・身体活動や食生活の改善 → 効果を期待できる

・お酒を控えてもらう → 効果はややあり

・タバコをやめてもらう → 効果は小さい

その2:どういう機能が有効なのか?

・ストレスマネージメント

・モデリング(先生が動画などで指導する)

・適切な目標/行動プランの設定

・本人と似たプロフィールの人がどれくらい頑張っているのか示す

・本人の努力によりどれだけ成果があがったのが適切にフィードバックする

その3:どういう機能は有効でないのか?

・行動の結果(例:体重)を記録する

・他人からのイイね!機能


やはり何でも調べてみるもので、個人的に意外だったのは、「他人からのイイね!」機能はあまり意味がなくて、「(自分と似たようなプロフィールの)頑張っている人をみる」機能はよさげだということです。

このような研究成果は、まだまだたくさん眠っているので、引き続きみなさまとディスカッションさせて頂けるのを楽しみにしておりますm(_ _)m

注:今回は分かりやすさのため超・要約したので、詳しくは下記論文をご覧ください!

「インターネットを活用した行動変容:システマティックレビュー&メタ解析」

>>>Write by Yoshiki Ishikawa

石川 善樹

予防医学研究者・医学博士。(株)Campus for H共同創業者。1981年、広島県生まれ。東京大学医学部卒業後、ハーバード大学公衆衛生大学院修了。「人がより良く生きるとは何か」をテーマとして研究し、常に「最新」かつ「最善」の健康情報を提供している。専門分野は、行動科学、ヘルスコミュニケーション、統計解析等。
NHK「NEWS WEB」第3期ネットナビゲーター。ビジネスパーソン対象の講演や、雑誌、テレビへの出演も多数。著書に『友だちの数で寿命はきまる 人との「つながり」が最高の健康法(マガジンハウス)』。