FITNESS BUSINESS

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日本フィットネス企業、海外進出の可能性を考える-アメリカ・後編−

2016.01.30 土 オリジナル連載

一人の日本人女性が日本からはるか9千キロ離れたアメリカ西海岸で活躍している。
名前は“奥野亜矢”

ハイパーフィットネスでのクラブ支配人経験後、更なる高みを目指しフィットネスの本場であるアメリカへ渡米。大学でフィットネスビジネスを学びつつ、米国の高級クラブThe Sporting Clubや大学フィットネス事業部のグループエクササイズ指導、クラブマネジメント分野など、業界の第一線で職務経験を積んでいる。その奥野氏が感じたリアルなアメリカのフィットネス業界の風景を伝える。

前回の記事では、日本企業のアメリカ進出の成功例を中心にご紹介しました。今回は、私の考える“日本フィットネス企業のアメリカ進出のプラン”を具体的にご紹介したいと思います。

アメリカでも未開拓な領域が存在する

まず、アメリカのフィットネスクラブ数は34,460軒、日本の4,375軒に対し約8倍、フィットネス参加率アメリカ17%、日本は3.3%。アメリカの人口は日本の約2.6倍ですが、フィットネス参加率は日本の5倍以上です。数値から見てもフィットネスの需要の高さは明らかに日本の数倍と言えます。さらに広大な国土のアメリカ。

しかし地域によっては未開拓な場所も多く、可能性が多くあります。

店舗数だけで見ると、一見飽和状態に思われがちですが、多くのクラブは同じセグメントに位置し、ターゲットとしている顧客層は偏っています。大手24 Hour FitnessやCrunch、Chuze、Planet Fitnessといったチェーンクラブは価格バリューを一番のセールスポイントとし、若年層を中心に支持を得ています。

サービスはとてもシンプルで、ジム(一部スタジオ・別途料金)の提供のみです。それに対しLifetime FitnessやEquinox、Bay Clubといった高級クラブは、施設力とサービス力を強みに展開しています。フィットネス愛好家やパーソナルトレーニングなどの付帯サービス利用者が多く、低価格クラブとはターゲット層が大きく異なります。これら価格、フィットネス経験から分類した場合、需要はあるけれども未だどこの企業も進出していないセグメントが1つだけあります。

需要はあるが未だ開拓されていない領域とは?

それは、初心・初級者をターゲットとし、丁寧なサービスと的確な指導を提供するフィットネスクラブです。「フィットネスは大切だとわかっているけれど、月に2万円の高級クラブはハードルが高い。」「バリバリウエアを着こなしているブティッククラブや高級クラブには行きたくない、でも施設だけあっても何をしていいのかわからない。」「アパートに付帯しているジム、会社のジムを使っているけれど効果が出ない。自己流で効果的な方法がわからない。」このような中〜高所得若年層〜中高年の、更に男性をターゲット顧客層とします。仮にその名前をFitness Japanとしましょう。

図①

上記の図をご覧下さい。初心者中高年女性をターゲットとし成功しているカーブスと同じ経験層、違いは男性ターゲットということです。

図②

さらに、「日本」発祥をブランディングする場合、こちらで人気のある日本文化を取り入れるとさらにユニークになります。ヘルシー、健康志向で大人気の「日本料理×栄養指導」、映画が火付け役で今も道場が多くある「空手・武道×グループエクササイズ」、ヨガの人気は衰えることを知らない「Zen、瞑想×リラクセーションクラス」、今や世界共通語の「アニメ、ゲーム×エクササイズ」など、多くの要素が考えられます。

デメリットとしては、中価格帯というのは最も特徴を出しづらく、また初心者対象となると退会率上昇の懸念があります。しかし、ブランディングに成功すれば克服出来ると考えます。

アメリカは本当に広く、地域によって地価、水道光熱費、人件費などの物価が大きく違います。よって今回は価格には触れませんでしたが、近年企業の進出が進み人口増が進むテキサスや都市部の郊外など、新規出店出来る場所は明らかに日本より多くあると思います。

2回にわたり日本企業のアメリカ進出について執筆させていただきました。私は、決して「日本のフィットネス市場は縮小傾向だから海外へ」という考え方ではありません。日本のフィットネス市場もまだまだ開拓余地はあると思いますし、成長すると信じています。

しかし同時に、「日本だけでなくビジネスチャンスがあれば世界中どこへでも」進出する柔軟さがあってもいいのでは、と思います。もしこの記事をご覧いただき、アメリカ進出にご興味がある方がいらっしゃったら、ぜひ私まで!いつでもお手伝いさせていただきます!

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>>>Write by Aya Okuno

奥野 亜矢

ロサンゼルス在住。自身の柔道家としてのアスリート生活の経験から、「大好きなスポーツ、フィットネスを通じて多くの人を幸せにしたい!」と志しフィットネス業界へ。
コナミスポーツ、ハイパーフィットネスにてトレーナー、グループエクササイズディレクター、そしてクラブ支配人を経験。”フィットネスの本場 アメリカ”でビジネスキルを磨き、挑戦するため渡米。高級クラブThe Sporting Clubや大学フィットネス事業部にてグループエクササイズ指導、クラブマネジメントに携わる。