FITNESS BUSINESS

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“世界のフィットネスビジネス、その舞台裏の風景Ⅵ”

2016.01.11 月 オリジナル連載

「世界一のクラブのゼネラルマネジャーになる」という夢を実現するために、それまで在籍していた株式会社東急スポーツオアシスを退職し、渡米。米国の超優良スポーツクラブ企業であるウエスタンアスレチッククラブスにてクラブのゼネラルマネジャーを歴任。日本と米国のクラブマネジメントの架け橋となり、日本のフィットネス業界の地位向上に向けて奮闘している石川 友行氏に”世界のフィットネスビジネスとその舞台裏”の風景を伝えてもらう。

米国クラブのプロモーション手法とは

米国のクラブの集客の手法は、クラブのタイプによって様々です。日本と生活習慣や文化も違い、消費者が日々目にする見る媒体にも両国間では様々な違いがあり、国土も広いため西海岸、東海岸と内陸側の街では全く異なる媒体や手段を用いることも珍しくありません。

前回2回にわたって記した会員権セールススタッフの存在や仕事内容は会社や地域によってさほど差がないかと思いますが、今回は実際のプロモーション活動について記します。

プロモーション手法は、大きく分けて古い物と新しいものがあるように思います。

『保守派(トラディショナル派)』

どの業界にも昔からの手法を根強く続けて成功している事例もあります。トラディッショナル派のプロモーションの特徴は以下のようなものです。

• 価格を媒体に出さない。⇒ウェブサイトや広告に価格を表示しないのが特徴です。

• 電話番号が大きく表示されている。⇒広告自体が問い合わせを喚起するものと捉えているからです。でも、通常は電話しても価格は教えてくれません。

• 体験は無料でできる。もちろん予約制。電話してクラブをツアーした場合、次回体験は通常無料です。

• 使用する媒体は、地域の新聞の紙面のディスプレイ広告が多い。⇒折り込みは米国ではあまり人気のある媒体ではありません。折り込み自体ない新聞も多数ですし、新聞は駅で買うものと思われていて、配達してもらうとかなり割高になるのでアメリカ人は好みません。

• 交通広告はほぼ使わない⇒特に自動車通勤が当たり前の国なので、フィットネスクラブに通える人々はそもそも公共交通機関を使っていないと考えています。 これらのやり方はまだまだ多くの個人オーナーのクラブでは主流だと思います。

『改革派』

上記の現状を変えようとしているのが一部大手のチェーン店やフランチャイズ展開しているクラブです。それらには以下の特徴があります。

• ウェブサイトへの投資をして、ネット誘導に力をいれている。⇒ターゲットに合わせてスタイルがとにかくカッコいいのが特徴かと思います。

• ホームページ上で価格を表示。入会もできる。

• Webの問い合わせフォームに誘導して無料体験や1週間のトライアル会員権を無料で提供。

• Webの問い合わせフォーム記入後は電子メールで定期的にフォローや誘導が自動的に行われる。

• 体験後には、しっかりセールス担当がフォローして入会を促す。

• 紙媒体や、看板などには一切投資しない。

• 全国展開しているクラブはテレビ広告やダイエット番組のスポンサー活動、PR活動に力を入れている。

内陸の個人営業のジムはまだまだ保守派のクラブが多いですが、改革派は大手の『イクイノックス』や『24hour Fitness、Lifetime Fitness』です。こうしたクラブは新しい形を創ろうとしています。

この中間を行くのが高級クラブで、高額な価格は表示しないで問い合わせフォームから無料体験を促すケースが多いです。低価格の『プラネットフィットネス』などは、看板や新聞広告のみ使用して営業活動はあまりせず、価格自体がプロモーションとなっているのが現実のようです。低価格クラブの台頭で、確実にプロモーション手法は変わろうとしています。その背景にはCRMを駆使しているセールス担当者やウェブマーケティングスタッフなどの新しい職種や彼らの仕事の仕方の変化があります。今後も低価格クラブの台頭が進み、総合クラブやジム・スタジオ型のクラブは、進化したプロモーション活動を駆使して、成長を図る戦略をとることにより生き残って行くのだと思います。

>>>Write by Tomoyuki Ishikawa

石川 友行

1996年、「世界一のクラブゼネラルマネジャーになる」という夢を実現するため、それまで在籍していた株式会社東急スポーツオアシスを退職し、渡米。米国の超優良スポーツクラブ企業であるウェスタンアスレチッククラブスにて3クラブのゼネラルマネジャーを歴任する。日本と米国のクラブマネジメントの架け橋となり、米国のクラブ経営、オペレーションを紹介した。’09年に日本に帰国後、株式会社東急スポーツオアシスに復職し、オアシスラフィール恵比寿のマネージャーを務め、そのほか2店舗の統括マネジャーを担当。現在はクラブツーリズム株式会社の顧問として新規事業部に所属しながら、日本のフィットネス業界の地位を向上させるべく、奮闘する。