FITNESS BUSINESS

facebook twitter googleplus

日本のフィットネス企業、海外進出の可能性を考える—アメリカ・前編− 

2015.12.23 水 オリジナル連載

一人の日本人女性が日本からはるか9千キロ離れたアメリカ西海岸で活躍している。
名前は“奥野亜矢”

ハイパーフィットネスでのクラブ支配人経験後、更なる高みを目指しフィットネスの本場であるアメリカへ渡米。大学でフィットネスビジネスを学びつつ、米国の高級クラブThe Sporting Clubや大学フィットネス事業部のグループエクササイズ指導、クラブマネジメント分野など、業界の第一線で職務経験を積んでいる。その奥野氏が感じたリアルなアメリカのフィットネス業界の風景を伝える。

日本企業の海外進出というと近年注目されるのはアジア圏ですが、最近でもアメリカへ進出しビジネスを拡大している日本企業は多くあります。長年アメリカでビジネスを展開してきた自動車産業、電機・半導体などの製造業、いわゆる「モノ作り」産業から、日本食ブームを受けた食品産業や、「ユニクロ」、「無印良品」などのアパレル、アミューズメントの「ラウンドワン」などの新興企業も店舗拡大しています。

元来アメリカで発祥したビジネスモデルを輸入、模倣して始まった日本のフィットネスビジネス。その日本のフィットネス企業がアメリカに進出し成功することは可能なのでしょうか。私の知るところでは、フィットネス業界に限らず、サービス業でもアメリカに進出し大成功している企業というのは未だありません。

日本企業での成功モデルとは

しかし、日本のビジネスモデルをそのまま展開し、世界中で大成功している注目企業があります。それは、日本の幼児、児童教育でとても有名な「公文式」。今やアメリカでも「Kumon」と言われ店舗拡大しています。元々海外在住の日本人、とりわけ駐在員として日本から派遣された家庭の子供が日本で学んでいた公文を継続して行いたい!というニーズから始まり、現在世界49の国と地域に展開しています。製造業ではなく、教育という「形のないもの」を海外展開し成功しているという点で、このビジネスモデルを研究することは今後の日本のサービス業の海外展開においてとても有益だと考えます。

360x240_photo1世界49カ国に展開する日本の幼児、児童教育「公文式」

私が考える成功要因は3つです。

まず一番に考えられるのはシンプルな価値訴求です。Math & Reading、算数と読み書きという2つの自立学習に目的を絞り明確化することで、とりわけ暗記学習が必要な幼児や児童を持つ保護者から支持を得ています。幼児教育も中高大学受験もと複雑にせず、対象を絞ったことが功を奏していると言えるでしょう。

次に、現地法人化しフランチャイズしているという点が挙げられます。今やKumonは数少ない日本人だけを対象としたビジネスではなくなっています。ですから、オーナーも現地人でありマーケティング、オペレーションも現地法人が行っています。

最後の成功要因は、日本の良い点をしっかりと継承しオペレートしている戦略です。算数や読み書きは単純作業の繰り返しですが、生徒のやる気を促すシステムや自分で宿題などを行う自立学習のスタイルを上手くオペレートしています。

フィットネスビジネスにおいての成功要因とは

まず、アメリカでのマーケティングにおいて明確なブランディングは必須です。ターゲットとなる顧客層はどの層なのか。分かりやすいセールスポイントは何なのか。日本のように中流階級が大半を占める均一化したマーケットではないので、ここが一番の鍵となるでしょう。

次に運営戦略をどのように展開するのか。日本とアメリカはサービスの文化、また働き方の文化も違います。全て日本人で経営することは、ビザを伴う人件費を考えると不可能に近いでしょう。現地のリーダーと日本の本社の運営力がポイントとなります。

最後に日本の良い点をどのように生かすかということですが、これはとても日本企業が得意とするところだと思います。日本のフィットネスがアメリカより優れている点は多々あります。それをオペレーションとして実際に現地にフィットするように戦略を練るということが必要でしょう。

以上を考慮すると、難しいのではという見方をされる読者の方が多くいらっしゃると思います。しかし、日本にあってアメリカにないフィットネスサービスというのは存在し、日本企業にも勝算があると私は考えます。

その詳細は、次号の後編でお話し出来ればと思います。ご期待ください。

【バックナンバー】
フィットネス新時代の幕開け-
米国のデジタルフィットネス市場とは-
リアルヨガ&ピラティス事情 in LA-
ウェルネスの効果を最大化する!アメリカ栄養指導の最新事情-
米国におけるストレスマネジメント事情-
米国のパーソナルトレーニング最新事情-
【続】米国のパーソナルトレーニング最新事情-
どちらが効果あり?日・米フィットネス マネジメント比較

米国流 人材教育・チームビルディング術

※参考サイト
http://www.kumon.ne.jp/world_whats-kumon/index.html

>>>Write by Aya Okuno

奥野 亜矢

ロサンゼルス在住。自身の柔道家としてのアスリート生活の経験から、「大好きなスポーツ、フィットネスを通じて多くの人を幸せにしたい!」と志しフィットネス業界へ。
コナミスポーツ、ハイパーフィットネスにてトレーナー、グループエクササイズディレクター、そしてクラブ支配人を経験。”フィットネスの本場 アメリカ”でビジネスキルを磨き、挑戦するため渡米。高級クラブThe Sporting Clubや大学フィットネス事業部にてグループエクササイズ指導、クラブマネジメントに携わる。