FITNESS BUSINESS

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“世界のフィットネスビジネス、その舞台裏の風景V”

2015.11.18 水 オリジナル連載

「世界一のクラブのゼネラルマネージャーになる」という夢を実現するために、それまで在籍していた株式会社東急スポーツオアシスを退職し、渡米。米国の超優良スポーツクラブ企業であるウエスタンアスレチッククラブスにてクラブのゼネラルマネージャーを歴任。日本と米国のクラブマネジメントの架け橋となり、日本のフィットネス業界の地位向上に向けて奮闘している石川 友行氏に”世界のフィットネスビジネスとその舞台裏”の風景を伝えてもらう。

セールススタッフがいなければ入会出来ない?

前回は、フィットネスクラブのセールススタッフについて記しましたが、今回は会員権セールスを実際に担当している人の仕事について記したいと思います。

日本のスポーツクラブの営業時間中は、いつでも入会手続きをすることができると思いますが、海外のクラブでは、セールス担当のスタッフがいる時以外の入会手続きはできないのが普通です。

日本のクラブスタッフから見ると、それはサービスが悪いように思えるでしょうが、分業制の海外のクラブでは、他のスタッフ、例えばフロントのスタッフなどは、クラブの入会金はおろか、会費の価格も知らされていないのが普通ですし、ましてや手続きなどの研修をしようともしていません。

入会を検討しているお客様は、通常、セールススタッフのいる時間帯に来場をして入会手続きをすることになりますが、その時間帯は朝の9時~夜の20時位までの時間帯で、セールススタッフが交代制でシフトをカバーします。2人であれば、11時から20時勤務のスタッフと、9時~18時の勤務に分かれて勤務しています。入会を検討しているお客様は、この勤務時間帯に来場して入会手続きをしなければなりません。クラブは、通常朝5時~夜の11時まで営業しているクラブが大半ですが、セールススタッフがいる時間帯にしか入会手続きができないのです。

では、クラブでは何名のセールス担当者を配置するのでしょうか?これは、そのクラブの退会率や退会者数より逆算して考えます。

通常、セールススタッフは平均的に毎月20件ほどの入会を獲得すると言われています。価格帯や、業態によって左右されますが、平均的なセールススタッフは20~30件の獲得で普通です。すると、会員が1,000名で退会率が毎月3%のクラブであれば、毎月30名が退会しますので、2人のセールススタッフを雇用すれば、会員数を維持できる確率が高く、3人雇用すれば順調に会員数が純増していく計算となります。もちろん、人材の経験や技術差で数字は上下しますが、考え方はこうなります。

歩合制で人件費を抑える

都心(ダウンタウン)で営業している低価格の高回転型のクラブでは、セールススタッフを10人雇用しているケースも少なくはありません。「人件費が大変」と思われる経営者の方もおられるでしょうが、このようなクラブは、セールススタッフをパーソナルトレーナーと同じように外部委託契約を結び、歩合のみで勤務させる例も少なくはありません。すなわち、会員を獲得しなければ、人件費が発生しないシステムとなります。このようにして、人件費の高騰を抑えています。

私が勤務していたクラブでは、入会金が会員権の種類によって、6万円から25万円。月会費が個人会員で2万円、家族会員で38,000円位の価格設定をしていましたが、セールススタッフの報酬は、基本給が18万円、その他販売した会員権の入会金の20%を歩合として支払っていました。セールススタッフは、平均15万円の入会金の20%、即ち3万円を歩合として受け取ることができ、それを20件販売するのですから、歩合収入で60万円、さらに予算達成ボーナスや、個人目標達成ボーナスなどで5万円から10万円支払われるようになっていますので、歩合+ボーナス+基本給となり、優秀なセールスマンであれば、マネージャーの給与を悠々超えていくことも稀ではありません。

私の元スタッフで、特別キャンペーンで5万円の入会金の会員権を150件売っていたNo.1セールススタッフがいましたが、彼女の月収は、軽く100万円を超えていました・・・

このような給与制度なので、このNo1セールススタッフは、同じクラブにもう37年勤務しており、彼女がいるだけで、毎月100件の入会を期待することができるのです。

さあ、みなさんもプロフェッショナルセールススタッフ、雇用しませんか?

>>>Write by Tomoyuki Ishikawa

石川 友行

1996年、「世界一のクラブゼネラルマネージャーになる」という夢を実現するため、それまで在籍していた株式会社東急スポーツオアシスを退職し、渡米。米国の超優良スポーツクラブ企業であるウェスタンアスレチッククラブスにて3クラブのゼネラルマネージャーを歴任する。日本と米国のクラブマネジメントの架け橋となり、米国のクラブ経営、オペレーションを紹介した。’09年に日本に帰国後、株式会社東急スポーツオアシスに復職し、オアシスラフィール恵比寿のマネージャーを務め、そのほか2店舗の統括マネージャーを担当。現在はクラブツーリズム株式会社の顧問として新規事業部に所属しながら、日本のフィットネス業界の地位を向上させるべく、奮闘する。