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【HitItem】 マスから個へアプローチ、1人ひとりの施設利用状況を可視化  ティップネス

2018.07.25 水 オリジナル連載 スポーツクラブ情報 新商品・サービス

時代は確実に、マスを対象にする姿勢から、「個」へと移っている。それはフィットネスクラブで提供されるサービスのみならず、あらゆる業界で見られる動きといえる。

一人ひとりの利用目的を正しく把握し、そこを巧みに“突く”鋭さが求められるフィットネスクラブにおいて、いかにして「個」に歩み寄るか。クラブと個の距離感を縮めることにも、ITは大きく貢献している。

お話を訊いた方
株式会社ティップネス 営業推進部課長 藤本修吾氏

一人ひとりの来館ステータスを可視化対応すべき個客を特定

東京の渋谷や新宿、大阪の梅田など、大都市を中心に店舗展開を進めてきた株式会社ティップネス。

狭い“箱”の中で多くの会員を抱えるには、効率性や生産性が重要視された。それはある意味、同社のカルチャーであったかもしれないが、時代が移り変わり、競合クラブが多数登場してくると、もっと一人ひとりのお客さまを大切にし、しっかり根をおろしていただくことが最重要課題となってきた。そこで始まったのがITテクノロジーの活用だ。

「5年前から『コミュニケーションシステム』を全店舗で採用しました。これにより、退会を抑止する効果が得られています」そう話す藤本氏。

コミュニケーションシステムとは、簡単にいえば、スタッフが声をかけるべきお客さま、つまり注目すべきお客さまが一目でわかるというシステムだ。

現在、館内にいるお客さまの顔写真がパソコンの画面上で一覧表示され、さらに個人の情報は「入会60日以内かつ利用が週2回未満」「1ヶ月間未利用者」など、利用状況に応じて8種類にカテゴライズされて、色分けして表示される(写真1)。

写真1

写真1

この画面は、フロントとジムに設置されたモニターでいつでも確認することができ、スタッフは、入会してまもないお客さまや、利用頻度が一定に満たないお客さまなどに対して、積極的に声をかけるよう推奨される。

「スタッフがどんな声をかけたのか、お客さまとどんな会話をしたのかなども逐一、ログを残します。そのため、重ねて同じ質問をお客さまにしてしまうことがなくなり、コミュニケーションも円滑になりました」

退会抑止にじわじわと効果を発揮

これまでも積極的にお客さまへの声がけを行ってきたものの、入会後フォローが必要なお客さまへの実質的な達成度は20%程度だった。

しかし、このシステムを導入してからは、ほぼすべての店舗で50%程度、つまり、今日、来館したお客さまの半分に対して、個別に声をかけられるようになった。目標は80%であり、それを実現しているのはまだわずか数店舗だが、今後ますます力を入れる。

「これまではスタッフによって声がけの得手不得手に差がありましたが、ひとつの情報を全員で可視化し、『こういうステイタスのお客さまには、このように声がけをする』と改めてマニュアルを整備したことにより、結果としてお客さまの定着につながり、退会率も徐々に減少しています」。そう話す藤本氏。

システムの導入当初は、ほとんどのスタッフが直筆でカルテに書き込む従来のスタイルに慣れていたため、ITに対して苦手意識をもつ人も少なからず存在した。だが、導入時期に研修を行ったり、声がけのマニュアルをかたちにしたりすることで、少しずつシステムが浸透。導入からほぼ5年が経過した現在では確実な成果を見せている。

コンディショニングアプリを自社開発

そのほかITテクノロジーの応用という観点でいえば、同社では、「TIP-TAP」というアプリを自社開発していることにも注目だ。

同社では、2017年4月からコンディショニングプログラムに力を注いでおり、館内では専用の「コンディショニングスキャナー」により心と身体の調子を無料で測定。調子の測定結果を4タイプのコンディショニングステータスで示し、それぞれに適したトレーニングメニューを提案する。

さらに、館内にいる時間だけでなく、日常でもコンディショニングトレーニングを実践できるよう、スマホアプリ「TIP-TAP」を開発。ダイエット、ボディメイク、メタボ対策、健康維持、リフレッシュなどの目的をより効果的に達成するため、一人ひとりの調子に合わせた「運動」「食事」「回復」のメニューを提案し、1週間でコンディショニングを整えることを目指している。

「導入は’17年4月。それ以前からお客さま向けwebサービスとしてiTIPNESSがありました。ここではレッスンスケジュールの確認やレッスンの記録、パーソナルトレーニングの予約などができるのですが、さらにアプリをダウンロードしていただくことで、ご自宅でも行えるトレーニングメニューなどを確認できます」

現在、ダウンロードしているお客さまの比率は約35%。今後はさらにお客さまの個人情報を蓄積するとともに、さらに精度の高いコミュニケーションツールとして発展させていく構えだ。